NICO-1は、既に多くの大学研究者・企業研究者様にご使用いただいております。共培養実験にてセルカルチャーインサートで変化しなかったのに、NICO-1では変化したとの感想を数件いただいており、不思議に思っていました。NICO-1は、両方のウエルを同時に観察できることなどがメリットであるため、セルカルチャーインサートは当初ライバルだと思っていませんでした。しかし、共培養研究で多くの研究者がセルカルチャーインサートを使用されているため、セルカルチャーインサートとの比較データが必要と思い、各種実験を行いました。その結果、NICO-1の方が共培養の効率が明らかに良いことが確認できたため、論文としても投稿した次第です。その過程で、セルカルチャーインサートにおいて、エクソソームの移行率が3日目には頭打ちとなり、以後変化しないことに疑問をいだき、理論的には詰まっている可能性が高いと思いながら、共同研究者と共に電子顕微鏡で確認してみました。電子顕微鏡のSEM,TEMの両方のデータを取得したところ、2つの事実が明らかになりました。

・セルカルチャーインサートでは、フィルターの孔を細胞がしっかり(がっつり)塞いでいます。

・セルカルチャーインサートで使用されているフィルターの孔数は、びっくりするほど少ない(やばいレベル)(某有名メーカー)。

私自身、研究者の立場としてセルカルチャーインサートのフィルターの孔数が少ないのには怒りを覚えました。確かにメーカーのサイトには孔数が公表されているのですが、電子顕微鏡の画像を見るまでは、比較的十分な孔数なのだろうと思っていました。皆さん、見たらびっくりします。セルカルチャーインサートで共培養実験をした結果が、共培養しても変化なしといった結果として解釈された論文が数多く存在しているのだろうと思います。その真実は共培養効果が孔数の少なさと細胞が孔を塞いでいるため、ほとんど共培養されていないだけの結果なのに、、、、というセルカルチャーインサートでの実験結果が根底から揺らぐような状況なのです。

セルカルチャーインサートは、50年以上前に、細胞浸潤をみるためのシステムとして開発されたものです。その場合のフィルターの孔のサイズは細胞が楽々に通りぬけられる大きなサイズです。細胞浸潤を見る場合は、細胞が孔を塞ぐことがないので問題ないと思います。しかし、いつの間にか、セルカルチャーインサートは、共培養の代名詞となり、細胞が通り抜けず細胞が分泌する物質がフィルターの孔を行き来して共培養効果を持つとされて、ずっと使用されています。いわば常識となっています。ところが、よく考えてみてください。細胞よりはるかに小さいサイズの孔の空いたフィルターに、細胞が載っているのです。フィルターの孔を細胞が塞いでいるのは理論的には当たり前なのですが、これまで誰もそんな事実を警鐘しなかったのでしょうか? しかも、確認した有名メーカーのセルカルチャーインサートのフィルターの孔数は極端に少なく、これでは実験が成立しないと思われるような少なさでした。

これまで、セルカルチャーインサートを批判的に記載する記事は書かないようにしていましたが、比較データ及び電子顕微鏡データを取得してみて、研究者として皆さんに警鐘しないといけないと思い、仕方なく明らかにするものです。これらの結果は、論文として投稿していきます。セルカルチャーインサートを実験系で使用している研究者の方は、今一度慎重に考えてみてください。細胞数がかなり少なければ問題ないのだと思いますが、培養期間中に見えない上側のウエルの細胞数が少ない保証はありますか? 細胞数が少なすぎると、実験結果にも影響が出てきます。目視による確認は必須ですが、確認できていますでしょうか?

これがセルカルチャーインサートの真実です。